読書を趣味にすれば、様々なメリットが期待できます。そこで今回は、「西遊記」を例を挙げ、もう一つ読書の楽しみを紹介します。
中国の四大奇書と回文
皆さんは「西遊記」というお話はご存知でしょうか?
「三国志演義」「水滸伝」「金瓶梅」に並ぶ中国の四大奇書に挙げられていて日本の「桃太郎」と同じように多くの人に知れ渡った作品だと思われます。
今回はその西遊記のもう一つのお話です。
その前に皆さんは中国語でも回文ができることをご存知でしょうか?
回文とはひっくり返しても読める文のこと。トマトや新聞紙がすぐに思い浮かぶのではないでしょうか。ただ日本語の回文が仮名による回文に対して中国語は漢字の回文です。一番の特徴は日本語の回文は同音同義の回文しかないのですが中国語の場合は漢字による異音異義の回文も作れるのです。
回文にまつわるこんなエピソードがあります。中国のとある靴屋でこんな広告が張り出されていました。
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それを買った客がしばらくしてソールのはがれた靴を持ってきて返品しようとすると、店員は広告を逆さまに読んで客に言い聞かせました。
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中国の商売人は強いですね。
一般的な西遊記の話(概要)
西遊記は今から約五百年前に中国で書かれた小説ですが実在した玄奘法師をモデルに道教、仏教、天界、仙界、神や龍や妖怪など虚実が入り乱れるお話となっています。こんなに面白いお話ですがその根底には少しでもこの世の中をよくしたいという作者の願いが込められているようです。
まずは西遊記の内容を簡単にご紹介します。
昔々、花果山(かかざん)という山の頂上に大きな石がありました。ある日、いきなり石が割れて、中から猿が生まれました。この石猿こそ孫悟空です。さて、この石猿、なかなかの暴れ者で産まれるなり、そこいらの猿たちを全員子分にし、喧嘩三昧の暴れ放題。更に世の中のすべての秘密の術を知っている菩提祖師という仙人に弟子入りし、一気に十万八千里も飛べる觔斗雲(きんとうん)を乗りこなす術を学びました。それから海の底の竜宮に行き竜王から伸縮自在の如意棒(にょいぼう)を奪うと地上や天界で暴れ回ります。神々の中で一番えらい天帝も手に負えません。
さすがにやり過ぎたのかついにお釈迦様が怒り、悟空を地面にたたきつけると、五行山(ごぎょうさん)という大きな山を孫悟空の上に乗せ「罰として五百年そこで反省するように」と封印してしまいました。
そして五百年後、その頃の中国は「唐(とう)」という国で、その国の長安という場所に玄奘(げんじょう)法師というとても真面目なお坊さんがいました。ある日、玄奘法師の前に観音様が現れ
天竺(てんじく)に仏教の経典を取りに行くよう告げました。それを知った皇帝は玄奘法師に「三蔵法師」というありがたい名前を授けさっそく出発するよう命じました。
旅の途中、五行山で封印されていた孫悟空を旅のお供をするのを条件に助けました。しかし悟空は短気でへそ曲がりですから、怒らせると何をしでかすか分かりません。そこで三蔵法師が困っていると、観音様が出てきて金箍呪(きんこじゅ)という金の輪を授けました。逆らった時に呪文を唱えると、ものすごい力で頭を締め上げる道具です。
以来、三蔵は悟空が逆らうと呪文を唱えだし、悟空はそのたびに
「ヒーッ!痛い痛い!いうこと聞きます~!」
とたちまち降参。こうして三蔵法師は悟空をお供に旅をしました。
その後、白馬に変えられてしまった龍、元は天界で水軍を指揮していたが悪さをし、追放され高老荘という村に住んでいた猪八戒、元は天界で将軍をしていたが罪を犯し地上に落とされ流沙河という川に住んでいた沙悟浄という二人の妖怪も旅の共に加え長い旅に出ました。
道中様々な悪い妖怪に出くわしたりやらかしたこともありましたが天界や土地の神様の助けもありついに天竺へ到着しました。何と、十四年の長旅です。
最後に大雷音寺(だいらいおんじ)に行けばお釈迦さまに会えます。ところがすぐに大きな川に出てしまいました。四人は川を渡ろうとしましたが、そこにあるのは底の抜けた船だけです。おそるおそる船に乗って川を渡っていくと、死骸がいくつか川を流れていきます。悟空がそれを差して、
「お師匠様!あれはあなたですよ」と言いました。
見ればその通り。死骸は、三蔵法師や悟空、八戒、沙悟浄たちだったのです。三蔵法師は終に肉体を脱ぎ捨てることが出来たと喜びました。
四人はとうとうお釈迦様に出会うことが出来ました。お釈迦様の前まで来ると「皇帝の仰せによってお経を頂くため、はるばる参りました」と申し上げます。
こうして経典を授かった一行は長安に戻ると皇帝と謁見し経典を渡しました。その後西天にてお釈迦様に称賛の言葉をかけられた五人はついに罪を許され三蔵法師は栴檀功徳仏(せんだんくどくぶつ)、悟空は闘戦勝仏(とうせんしょうぶつ)、八戒は浄壇使者(じょうだんししゃ)、沙悟浄は金身羅漢(こんしんらかん)という仏様にしてもらい極楽の光の中で、皆楽し気に笑うのでした。
めでたしめでたし。
実はこの西遊記、回文でも読めることをご存知でしょうか。そうです、もう一つの西遊記とは回文で読んだ西遊記のお話です。それではご紹介します。
もう一つの西遊記(回文版)
ある日お釈迦様は弟子の四人と白龍に仏教を宣教するよう唐の国へ一行を派遣しました。道中様々な妖怪に出くわします。
戦って、戦って、しかし四人は気づいてしまいました。どんなに悪事を働いても後ろ盾さえあれば悪事が裁かれることはないのです。
猪八戒と沙悟浄はその現実に絶望し猪八戒は高老荘という村にひきこもり沙悟浄は流沙河という川にもぐり込みました。ただ唯一、悟空だけは正義が勝つことを最後まで信じ妖怪を退治しながら、三蔵法師を唐まで送り届けるため旅のお供を続けました。
しかしそれに我慢ならない天帝は観音様に取引を持ち込みました。
三蔵法師を無事唐まで送り届けることを約束するかわりに孫悟空という目障りな奴に金箍呪(きんこじゅ)をはめ込んで欲しいと言うのです。
観音様はそれに同意しました。
そして悟空を騙し討ちし白龍を谷底に突き落としてしまいました。
こうして悟空は敗れ五行山に封印されてしまったのです。
そんな悟空を見捨て三蔵法師は一人長安へ向かいました。長安に着いた三蔵法師は宣教の役目を終えて、栄華を誇り富貴を極めた一生を過ごしました。
それから五百年後、悟空はついに五行山から抜け出すことが出来ました。一言も話すことなく天地をひっくり返す勢いで暴れ回ります。手に負えなくなった天帝は仕方なく、沙悟浄に水軍を指揮する役目を、猪八戒に天の軍隊の大将の役目を与え、孫悟空を殺すよう命じました。
最後の最後に仲間同士で殺し合うことに心が疲れた悟空は、自分自身を封印するため菩提祖師に弟子入りし修行しました。それから花果山に戻りサル群れの中で猿たちを見守り平凡な一生を過ごすとついには花果山のてっぺんで大きな石になってしまいました。おしまい。
いかがでしたか?
少しでもこの世の中をよくしたいと作者の願いが込められ書かれた作品、回文で読むと全く逆の意味になりましたね。本当は作者がこの世の中の汚さを嘆いた作品だったのかもしれませんね。
こう読むと色々楽しみが増えるでしょうか?是非、他の作品も試してみてください。
最後に、今回のテーマはYoutubeでも紹介しました。興味がございましたら、是非ご覧になってください!