海外の扱っている企業
アメリカ
・ICON Technology……2018年から現場で建設用3Dプリンターを用いて、セメント系材料により建築物を造形できる技術を有しています。アメリカとメキシコで100以上の住宅や構造物を造形した実績があります。
中国
・WinSun……2008年から2014年の間に建設用3Dプリンターを用いた建築物の造形を成功させました。工場で建設用3Dプリンターにより部材を造形し、現場に運輸して組み立てる方式を取っています。
オランダ
・CyBe Construction……2014年ごろから建設用3Dプリンターの運用を始めました。工場などで固定して使う「Cybe R 3Dp」と自走式3Dプリンター(RC 3Dp)などを有しています。RC 3Dpは建築現場での造形が可能です。
・MX3D……金属3Dプリンターメーカーです。材料ワイヤーを溶融しながら造形を行うWAAM方式を用いています。ステンレスで造形した橋をオランダ・アムステルダムの運河にかけたことで知られています。
その他、Vertico、Twente Additive Manufacturingといった新興企業が相次いで設立されており、欧州では、オランダが一歩抜き出ている印象です。
イタリア
・WASP……2012年に創業されました。Crane WASPを用いて、モジュール式の建築コンポーネント、建具、彫刻、サンゴ礁などを造形しています。
イギリス
・Ai Build……2015年に設立されました。建設用3DプリンターにAI(人工知能)も組み合わせることで、複雑な構造物の造形にも取り組んでいます。
フランス
・XtreeE……コンセプトハウス、人工サンゴ礁、雨水調整装置、歩道橋など様々な建築物を造形しています。大手建築材料メーカーLafargeHolcimとパートナーシップを締結していることでも知られています。
・Constructions-3D……建設現場に直接持ち運ぶことができるMaxiPrinterを用いて、建築物を造形できます。MaxiPrinterは堅牢なトラックと油圧リフティングシステムで複雑な地形に移動させることできる点が特長です。
オーストリア
・Concrete 3D……特殊なコンクリート陸屋根により、通常のコンクリート屋根よりも軽量化でき、コンクリートの使用量と温室効果ガスの削減につなげています。
デンマーク
・COBOD International……ガントリー型コンクリート系建設用3Dプリンター「THE BOD2」を世界各国に提供しています。他社製品と比較して大型構造物の造形や屋外での利用が可能である点が注目されています。モルタルだけでなくコンクリートも利用できる点も特徴の一つです。
・Hyperion Robotics……建設用3Dプリンターにより、工期の短縮、材料使用量とCO2排出量の削減に取り組む企業です。サイロ、水タンクや変電所などの基礎、土留め構造などのインフラなどで実績があります。
ドイツ
・Aeditive……2019年に設立されました。ドイツの産業ロボットメーカーKUKAのロボットをベースに建設用3Dプリンター「Concrete Aeditor」を開発しました。二台のロボットによりコンクリート打設と表面の後処理や配筋の位置決めなどを同時に行うことができる。鉄筋を組み合わせることができる点が特長です。
セルビア
・Natura Eco……東ヨーロッパで初めて建設用3Dプリンターによる建築を実現した企業です。NEcocreteという低セメント系で環境にやさしい独自素材を用いています。
アラブ首長国連邦
・BESIX 3D……BESIX 3Dスタジオにおいて、ドイツの産業ロボットメーカーKUKAのロボットと3Dモルタルを直接中断なく供給できるコンクリート混合ポンプを導入しています。BESIX 3D本社ファサードや3Dプリントパビリオン「DECIDUOUS」などの作品が知られています。
海外の活用事例
公共工事の例
- オランダ・アムステルダムにおいて、MX3Dがステンレス鋼構造の3Dプリント橋を造形しました。2015年に計画が発表され、2018年に完成。全長12.5メートル、幅6.3メートル、総重量4.5トン。1,100 km以上のワイヤーが使われました。
- 中国上海市宝山区のWisdom Bay Innovation Park内に清華大学のチームが建設用3Dプリンターにより造形した歩道橋を建設しました。完成は2018年12月。全長約26.3メートル、幅約2.6メートルで、中国最古の橋である安済橋(趙州橋)をオマージュしたものです。安済橋は10年の歳月をかけて作られたとされていますが、安済橋のオマージュは建設用3Dプリンターによりわずか18日で完成しました。
- オランダ・ヘルダーラント州のナイメーヘン市において、歩行者及び自転車用のコンクリート3Dプリント橋が造形されました。2019年9月に設置され、全長29メートル。3Dプリント橋としては現時点で世界最長です。
- アメリカ・テキサス州バストロップ郡において、3Dプリント製軍事兵舎が造形されました。ICON社の次世代建設システムVulcan(ヴァルカン)と、アメリカ軍が独自開発した材料Lavacrete(ラヴァクリート)を使用して建築されました。約167平方メートルで軍事訓練中の兵士72名を収容できます。2021年8月に完成。建設用3Dプリント技術は、物資調達が困難な戦地でも短期間で低コストで兵舎などを建築できることから軍用としても注目されています。
- 中国・深圳において、3Dプリントによる公園「宝安3Dプリントパーク」が造成されました。面積は、5,523平方メートル。ベンチ、擁壁、花壇、彫刻、縁石などが、建設用3Dプリンターにより造形されました。手掛けたのは、中国の建設用3Dプリント企業AICT(Advanced Intelligent Construction Technology)です。
- アメリカ・フロリダ州ウェリントンにおいて、デンマークのCOBOD社の建設用3Dプリンター技術を用いた乗馬施設が造形されました。2023年7月に完成。総床面積940平方メートルで世界最大の3Dプリント建物とされています。
- 2024年のパリ・オリンピックに向けて、フランスのXtreeE社などが約40メートルの3Dプリント製歩道橋の建設を計画しています。パリ北側に位置するオーベルビリエに建設が予定されているとのことです。
住宅・民間工事の例
- メキシコの農村地帯において、ICON Technologyが技術開発した建築用3Dプリンター「バルカン2」を用いて、造形した住宅が建築されました。面積は約46平方メートル。寝室2室に浴室、リビング、キッチンを備えています。1棟の建設費は日本円にして約40万円。低価格で建築できることから、貧困層の住宅事情改善に貢献できると期待されています。
- ドイツ西部のベックムにおいて、ドイツの建設会社PERIが、デンマークのCOBOD社製の「BOD2」を用いて2階建て住宅を造形しました。2021年完成。延べ面積約160平方メートル、高さ6.5メートルで、建物の躯体工事をわずか8日で完成させました。建築用3Dプリンターにより、工期を短縮できる点が注目されています。
- アメリカ・テキサス州のオースティンにおいて、ICON Technologyの建設用3Dプリンター技術を用いた住宅開発が行われました。ICON Technologyとアメリカの大手住宅ディベロッパーであるLennarと設計事務所「BIG」の共同開発。2021年に構想が発表され、2022年着工、2023年にモデルルームが公開され、すでに販売されています。住宅は約140~195平方メートルの平屋建てで、価格は475,000~599,000ドル(約6,800万~8,600万円)。建築用3Dプリンターによる本格的な住宅開発として注目されています。
- サウジアラビアの首都リアド近郊で行われている「シャムス アル リヤド」の都市開発プロジェクトにおいて、サウジアラビアの不動産開発会社Dar Al Arkanが、デンマークのCOBOD社の建設用3Dプリンター技術を用いて、3階建ての住宅を造形しました。建物面積は345平方メートル。高さは9.9メートル。現場で3Dプリントされた建築物としては世界で最も高いものとなっています。建築費は10,000ユーロ未満(日本円で約145万円未満)です。
- アメリカ・カリフォルニア州の住宅メーカーのMighty Buildings社が、建設用3Dプリンターにより、世界で初めてゼロ・ネット・エネルギー住宅を建築しました。2022年10月。建築用3Dプリンターにより環境に配慮した建築が可能であることを示しています。
- ドイツのハイデルベルクにおいて、不動産仲介業者KRAUSGRUPPE、3Dコンクリートプリント技術を有するPERI 、セメントメーカーHeidelberg Materialsが共同で、建設用3Dプリンタで商業ビルを造形しました。長さ約54メートル×幅11メートル×高さ9メートルで、現時点で欧州最大の3Dプリント構造物です。2023年夏に完成し、データセンターとして利用される予定です。
まとめ
世界各国では、建設用3Dプリンターによる住宅の建築、ビル、橋などの建設が日本より早く始まっています。色んな分野で活躍していて羨ましいです!
日本の状況も確認して見てみましょう!(建設用3Dプリンターの導入状況! in 日本)